ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)
ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)は、手首の親指側にある腱が通るトンネル(腱鞘)が炎症を起こし、腱がスムーズに動かなくなる状態を指します。特に、手首や親指を頻繁に使う動作が原因で発生することが多いです。正式には「狭窄性腱鞘炎」と呼ばれ、日常生活や仕事、スポーツなどで手を使う頻度の高い人に多く見られます。
ドケルバン病の原因
ドケルバン病は、主に手首の親指側にある2つの腱(短母指伸筋腱と長母指外転筋腱)が狭窄した腱鞘内でこすれ合い、炎症を引き起こすことによって発生します。腱の繰り返しの摩擦により、腱と腱鞘が腫れて炎症を起こすことで、痛みと腫れを伴います。
-
繰り返しの手の動作
- 繰り返し親指を使った動作(スマートフォン操作、文字入力、編み物、料理、重い物の持ち上げなど)や手首の回旋動作(テニス、ゴルフなどのスポーツ)が原因となることが多いです。
-
外傷や過使用
- 手や手首の外傷や過度の使用によって、腱や腱鞘が傷つき炎症を引き起こすことがあります。
-
ホルモンの変化
- 妊娠中や更年期など、ホルモンバランスの変化がドケルバン病を引き起こす一因となることがあります。
ドケルバン病の症状
ドケルバン病の主な症状は以下の通りです
-
親指側の手首の痛み
- 手首の親指側の痛みが最も特徴的で、手を使う動作(特に親指を使った動作)で痛みが増します。痛みは手首から親指にかけて広がることもあります。
-
腫れと圧痛
- 痛みのある部分に腫れが生じ、触れると痛みを感じることがあります。
-
動きの制限
- 手首や親指を動かす際に痛みが強くなり、可動域が制限されることがあります。
-
握力の低下
- 握力が低下し、物をつかむ動作が困難になることがあります。
ドケルバン病の診断
ドケルバン病は、問診と視診、そして特定のテストを通じて診断されます。
-
フィンケルシュタインテスト
- 患者に親指を握り込み、手首を小指側に曲げる動作を行わせます。この動作で強い痛みが生じる場合、ドケルバン病の可能性が高いとされます。
-
X線撮影
- 骨折や他の疾患を除外するために行われることがありますが、腱や腱鞘の状態を直接見ることはできません。
ドケルバン病の治療法
治療法は、症状の重さや日常生活への影響度に応じて選ばれます。以下の治療法があります:
1. 保存療法(非手術的治療)
-
安静と固定
- 親指と手首を固定するためのスプリントやサポーターを使用し、腱の安静を保ちます。これにより炎症の軽減を図ります。
-
薬物療法
- 炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や痛み止めの薬が処方されることがあります。
-
アイシングと温熱療法
- アイシングによって炎症と痛みを抑え、温熱療法で血流を促進して回復を早める効果があります。
-
理学療法
- 理学療法士によるストレッチや筋力強化エクササイズ、手技療法(マッサージなど)が有効です。
2. 注射療法
- ステロイド注射
- 腱鞘内にステロイド薬を注射することで、炎症を抑え、痛みを緩和します。これにより、症状が一時的に改善することが多いですが、再発することもあります。
3. 手術療法
- 腱鞘切開術
- 保存療法で症状が改善しない場合、手術が検討されます。手術では、狭窄した腱鞘を切開し、腱の通り道を広げて腱の摩擦を減少させます。術後はリハビリを行い、手首や親指の機能を回復させます。
ドケルバン病のリハビリテーション
リハビリテーションは、手術後または保存療法中に行われ、指と手首の機能回復を目指します。
-
ストレッチと可動域訓練
- 指や手首の可動域を広げるためのストレッチ運動を行い、硬直を防ぎます。
-
筋力強化エクササイズ
- 手首や親指の筋力を回復させるために、握力ボールやエクササイズバンドを使用した筋力強化運動を行います。
-
姿勢と動作の改善
- 症状が再発しないよう、正しい手の使い方や姿勢を学びます。職場環境の調整や正しい姿勢の維持も重要です。
予防と注意点
- 手首と親指の過度な使用を避ける: 手首や親指の動作を繰り返しすぎないようにすることが大切です。特に重い物を持ち上げる際は、正しい姿勢を保ちましょう。
- ストレッチと筋力強化: 予防的なストレッチや筋力強化エクササイズを定期的に行い、手の筋肉と腱を強化します。
まとめ
ドケルバン病は、手首や親指を頻繁に使用する人に多く見られる疾患で、早期の診断と適切な治療、リハビリテーションが重要です。日常生活や仕事の動作を見直し、手首と親指の健康を維持することが、再発を防ぐための鍵となります。