メニュー

SLAP損傷(肩関節上方関節唇損傷)

SLAP損傷(Superior Labrum Anterior to Posterior lesion)は、肩関節の上部にある関節唇(ラブラム)の損傷を指します。これは、上腕二頭筋腱が付着する部分の損傷で、特にアスリートや肩を酷使する人々に多く見られます。本記事では、SLAP損傷の原因、症状、診断、治療法について詳しく解説します。

SLAP損傷の原因

SLAP損傷は、主に以下の原因によって発生します。

  1. 反復的な肩の動作:野球やテニスなど、肩を繰り返し使うスポーツで多く見られます。
  2. 急性外傷:転倒して手をついたり、肩に強い衝撃を受けたりすることで発生します。
  3. 上腕二頭筋の引っ張り:重い物を持ち上げる際や急な動作で上腕二頭筋に過度な負担がかかると発生することがあります。

症状

SLAP損傷の主な症状は以下の通りです。

  • 肩の深部に感じる鈍い痛み
  • 肩を動かしたときに「ポップ」や「クリック」という音がする
  • 腕を上げたり、後方に動かしたりするときの痛み
  • 肩の不安定感
  • 肩の筋力低下

診断

SLAP損傷の診断は、以下の方法で行われます。

  1. 問診と身体検査:患者の症状や既往歴を聞き、肩の動きや安定性をチェックします。特定の動作(例えば、O'Brienテスト)で痛みの有無を確認します。
  2. 画像診断:MRIや関節造影MRI(MRA)などの画像診断により、関節唇の損傷の有無や程度を確認します。

治療法

SLAP損傷の治療は、損傷の程度や患者の年齢、活動レベルによって異なります。治療法は以下の通りです。

非手術的治療
  1. 休息:肩の負担を軽減し、痛みが引くまで安静にします。
  2. 薬物療法:痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用します。
  3. 理学療法:肩の柔軟性や筋力を回復させるためのエクササイズを行います。理学療法士の指導のもとでリハビリを行います。
  4. アイシング:痛みが強い時には、冷却パックを用いて肩を冷やします。
手術的治療

非手術的治療で効果が見られない場合や、重度の損傷がある場合には手術が検討されます。手術には以下のような方法があります。

  1. 関節鏡視下手術:関節鏡を使用して、損傷した関節唇を修復します。小さな切開を行うため、回復が早いです。
  2. 関節唇の縫合:関節唇が完全に裂けている場合、縫合して元の位置に戻します。

リハビリテーション

手術後や非手術的治療後のリハビリテーションは、肩の機能回復に非常に重要です。段階的にエクササイズを進め、肩の柔軟性と筋力を回復させることを目指します。

  1. 急性期

    • 目的:痛みと炎症の軽減
    • 方法:アイシング、軽い可動域エクササイズ
  2. 回復期

    • 目的:柔軟性の回復と軽度の筋力強化
    • 方法:ストレッチ、低負荷の筋力トレーニング
  3. 強化期

    • 目的:肩周囲の筋力とスタミナの向上
    • 方法:抵抗トレーニング、機能的エクササイズ
  4. 維持期

    • 目的:再発防止と肩の健康維持
    • 方法:定期的なエクササイズ、適切な負荷管理

予防

SLAP損傷を予防するためには、以下の点に注意することが重要です。

  • 肩の筋力と柔軟性をバランスよく保つ
  • 正しいフォームで運動を行う
  • 適切なウォームアップとクールダウンを行う
  • 無理な動作を避ける

結論

SLAP損傷は、適切な診断と治療を行うことで症状を管理し、肩の機能を回復させることが可能です。肩の痛みや不安定感を感じた場合は、早めに医師に相談し、適切な対策を講じることが重要です。適切なリハビリと予防策を取り入れることで、再発を防ぎ、肩の健康を維持しましょう。

 

リハビリについて

SLAP損傷(Superior Labrum Anterior to Posterior損傷)のリハビリテーションは、損傷の程度や治療方法(手術の有無)によって異なりますが、一般的には段階的に進めることが推奨されます。以下に、SLAP損傷のリハビリテーションの各段階と具体的なエクササイズを紹介します。

リハビリテーションの段階

  1. 急性期(手術直後または損傷直後)

    • 目的:痛みと炎症の軽減、肩の保護
    • 方法:休息、アイシング、軽い可動域エクササイズ
  2. 回復期(数週間後)

    • 目的:柔軟性の回復と軽度の筋力強化
    • 方法:ストレッチ、低負荷の筋力トレーニング
  3. 強化期(数か月後)

    • 目的:肩周囲の筋力とスタミナの向上
    • 方法:抵抗トレーニング、機能的エクササイズ
  4. 維持期(完全回復後)

    • 目的:再発防止と肩の健康維持
    • 方法:定期的なエクササイズ、適切な負荷管理

急性期のエクササイズ

  1. ペンドゥラムエクササイズ

    • 方法:体を前傾させ、腕をぶら下げて小さな円を描くように動かします。
    • 回数:1セット30秒間、1日3回
  2. パッシブレンジオブモーション(PROM)

    • 方法:他者の助けを借りて、肩を無理なく動かします。医師や理学療法士の指導のもとで行います。
    • 回数:10回×3セット

回復期のエクササイズ

  1. クロスボディストレッチ

    • 方法:痛みのない腕を反対側の肩に向けて伸ばし、もう一方の手で肘を引き寄せます。
    • 回数:左右各30秒×3セット
  2. ドアウェイストレッチ

    • 方法:ドアの枠に両手をかけ、胸を前に突き出すようにして肩をストレッチします。
    • 回数:30秒×3セット
  3. エクスターナルローテーション

    • 方法:軽い抵抗バンドを使用し、肘を90度に曲げて体側に固定し、外側に腕を回転させます。
    • 回数:10回×3セット
  4. インターナルローテーション

    • 方法:抵抗バンドを使用し、肘を90度に曲げて体側に固定し、内側に腕を回転させます。
    • 回数:10回×3セット

強化期のエクササイズ

  1. サイドレイズ

    • 方法:軽いダンベルを持ち、腕を横に広げて肩の高さまで持ち上げます。
    • 回数:10回×3セット
  2. フロントレイズ

    • 方法:軽いダンベルを持ち、腕を前に伸ばして肩の高さまで持ち上げます。
    • 回数:10回×3セット
  3. ローイングエクササイズ

    • 方法:抵抗バンドを使用し、椅子に座った状態でバンドを引き寄せます。
    • 回数:10回×3セット
  4. プランク

    • 方法:前腕を床につけて体を一直線に保ちます。肩周りの安定性を強化します。
    • 回数:30秒から1分を目指して行う

維持期のエクササイズ

  1. 肩のスタビリティトレーニング

    • 方法:バランスボールや不安定なサーフェスを使用して、肩の安定性を保ちながらエクササイズを行います。
  2. 全身的なフィットネス

    • 方法:全身の筋力と柔軟性をバランスよく維持するためのエクササイズを取り入れます。

注意事項

  • 痛みのコントロール:エクササイズ中に痛みが増す場合は、無理をせずに中止し、医師または理学療法士に相談してください。
  • フォームの確認:正しいフォームでエクササイズを行うことが重要です。理学療法士の指導を受けることをおすすめします。
  • 徐々に進める:負荷や回数を急に増やさず、徐々に進めることで効果的なリハビリが行えます。

まとめ

SLAP損傷のリハビリテーションは、段階的に進めることで肩の機能回復を目指します。正しいエクササイズと適切な休息を取り入れることで、早期の回復を目指しましょう。肩の痛みが続く場合や症状が悪化する場合は、専門医の診断を受けることが重要です。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME